過去の記憶を崩し、発掘し、昇華させた先の大地に立って、使命と魂を受け継ぐ
【ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】①世界観

この記事では、下記タイトルの世界観を書いています!
- ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(Wii U, Switch:2017年)
- ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド Nintendo Switch 2 Edition(Switch 2:2025年)
時間を忘れて厳しくも優しいハイラルに浸っていた頃を思い出しながら、本作の魅力を書いていきました。よろしくお願いします!
- ゼルダの伝説(ディスクシステム:1986年)
- リンクの冒険(ディスクシステム:1987年)
- ゼルダの伝説 神々のトライフォース(スーパーファミコン:1991年)
- ゼルダの伝説 時のオカリナ(N64:1998年)
- ゼルダの伝説 夢をみる島DX(ゲームボーイカラー:1998年)
- ゼルダの伝説 ムジュラの仮面(N64:2000年)
- ゼルダの伝説 ふしぎの木の実(ゲームボーイカラー:2001年)
- ゼルダの伝説 風のタクト(ゲームキューブ:2002年)
- ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス(ゲームキューブ:2006年)
- ゼルダの伝説 夢幻の砂時計(DS:2007年)
- ゼルダの伝説 スカイウォードソード(Wii:2011年)
- ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(Switch:2017年)
- ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム(Switch:2023年)
記憶なき目覚め、広がる大地
本作の舞台は「ハイラル」の大地――ここにかつて存在した王国は、100年前の「大厄災」で滅亡した。
主人公リンクは、どこからか聞こえてきた声によって「回生の祠」で目を覚ます。しかし、彼は一切の記憶を失っていた。
祠を出ると、そこには自然豊かな大地があたり一面に広がっている。
境界なき自然に触れる感覚
本作は、シリーズ初となるオープンワールド形式を採用している。フィールド全体がシームレスにつながり、視界に入る場所なら基本的にどこへでも行くことができる。
そして、フィールドの景観に沿った気候や足場の状態が、リンクの体調や行動に直接影響を与える。例えば、雪の積もる寒冷地では、防寒の備えがないとダメージを受けるうえ、雪に足を取られて移動速度が落ちる。
消えた社会、残った野生
そう考えると、このハイラルの大地を「世界」と表現するのは、どこかしっくりこない。なぜなら世界という言葉には、人間社会という含みがあるからだ。
もちろん本作にも人々は登場するし、街や村も存在する。しかし、かつての国家が滅びた今、ハイラルを支配するのは、人間の社会秩序ではなく、副題が示すとおりの「野生」なのだ。
生き抜くための過程
本作を始めて衝撃を受けたのは、とにかく何度もゲームオーバーになることだった。私の経験上、過去の3Dゼルダでは、初見でもクリアまでに10回もやられることは少なく、作品によっては数回程度ということもあった。
しかし本作では、おそらく3桁に達した。その原因は様々で、ときに(シリーズでは最弱クラスの)ボコブリンにさえ倒されることもある――これは非常に新鮮な体験だった。
本作でのゲームオーバーは、野生の脅威そのものを感じさせる。そして、ハイラルへの理解を深めることに自然とつながっていく。
アクションとリアクション
この野生のなかで、プレイヤーは数値には表れない経験を積んでいく。本作ではできることが実に多彩だ。
ほんの数例を挙げると、木を切る、弓矢で獣を狩る、草を燃やす、料理をする、崖を登る、馬に乗るといったアクションがある。
そして、これらのアクションが引き金となって、思わぬ結果を引き起こすことがある。気の向くままに行動すれば、環境から何らかの反応が返ってくる。
それを観測することでハイラルの仕組みを少しずつ理解していく。つまり、これは実験によって知識を得るサイエンスなのだ。
もちろん、難しく捉える必要はなく、思いついたことを試しているうちに、いつの間にか詳しくなっている――そうしたデザインが本作の見事なところだ。
寄り道こそが旅路
また、フィールドには探索意欲をかき立てる仕掛けが、至るところに散りばめられている。構造的な工夫については、すでに多くの媒体で語られてきたため、ここでは私の体験をひとつ紹介するにとどめたい。
あるとき、私は未踏の地へ向かうことにした。しかし、矢の所持数に不安があり、道中で調達しながら到達するルートを定めて馬で駆け始めた。
所要時間は1時間程度だろうと思った――が、実際には6時間かかった。これは矢を入手するのに苦労したという話ではない。
ハイラルの大地を移動していると、ついあちこちに気を取られてしまい、当初の目的を忘れてしまったのだ。
ひとつのダンジョン
ハイラルでの経験は、困難だったバトルや謎解きを打開する助けとなる。一方で、思うようにいかなかったり、アイディアが浮かばず手詰まりを感じたりしても、この広大なフィールドは、包容力をもってプレイヤーに新たな経験のきっかけをもたらしてくれる。
過去作のダンジョンもまた、数値には表れない経験を重ねる場だった。ただし、それらは一本道の構造で、謎が解けなければ先に進めなかった。
本作では、ハイラル全体がひとつのダンジョンであり、どこから、どのように進めていくかは、完全にプレイヤーに委ねられている。
使命を背負って
一方で、プレイヤーの頭の片隅には、いつ運命と向き合うか、という問いがくすぶり続ける。リンクが果たすべき使命はゲーム最序盤で提示される。
本作においても、リンクが勇者であることに変わりはない――木こりとして生きる道は選べないのだ。本作のストーリーは、過去作のような直線的な展開ではなく、リンクがハイラル各地で記憶を断片的に取り戻していく形で進んでいく。
そのため、ストーリーは最終的に収束するが、プレイヤーがたどる記憶の順序によって、物語の焦点の当たり方は微妙に変わってくる。
だからこそ、中途の段階では登場人物への印象も様々になるだろう。しかし、記憶で明かされる過去の出来事や、ハイラルに住む人々との関わりをとおして、使命を果たそうと思う時が誰しもにやってくる。
そして、そのとき背中を押すのは、ハイラルで積み重ねたプレイヤー自身の経験である。ひとつひとつは微々たるものでも、それらは確かに、運命の決戦にのぞむ糧になるのだ。
終わらない冒険
使命を果たしたら終わりなのだろうか?――きっと、どこかにやり残したことがあると感じるはずだ。あるいは、ただただ馬で街道を駆け抜けたくなるかもしれない――私がそうだった。
切りのいいところが見つからない――それがハイラルの冒険の魅力だ。数値に表れない経験と、避けられない運命を軸にコンスタントにプレイヤーの心をつかみ続ける。
野生が息づく、厳しくも包み込むようなこの広大なダンジョンに、まだ足を踏み入れたことがないなら、ぜひ体験してみてほしい。
そして、あなたが歩む道のりは、誰が意図したものでもない、あなただけの冒険となるだろう。


